夢みる蝶は遊飛する

「奈々ちゃん、ちょっといいかな」


奈々と呼ばれたその子は、たしか高校からバスケを始めたと先日言っていた。


「シュートは、手で入れるんじゃないの。レイアップシュートだってジャンプシュートだって、手はあくまでもボールをゴールの方に持っていくだけ。それはフリースローも3Pシュートも一緒なの」


真っ直ぐな瞳が真剣に私を見つめている。


「フリースローが届かないんだよね。今は手の力だけで打ってるから届かないんだと思う。膝をもっと使ってみて。こうやって曲げてバネを縮めて、その反動でボールを押し出すの。
一回やってみてくれるかな」


ボールを構えたその体勢をチェックしていく。


「もうちょっと足開いて・・・そう、そのくらい。そのまま膝を曲げて・・・あとは膝が伸びるのに任せて。前に跳ぼうとしないでね、はい打って」


カコン、と小気味良い音が鳴り、小さな手から放たれたボールがリングにはじかれた。

初めて届いた、と嬉しそうな笑顔を見て、私も思わず頬が緩んでしまう。


「今の、すごく良かったから。このまま練習すればすぐに入るようになるよ」

「はいっ!」

きらきらと純粋そうに輝く瞳を、うらやましいと思った。

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