夢みる蝶は遊飛する
練習が終わり、コートの真ん中で輪になる。
ここでは、練習でなにか気づいたことがある人が意見を述べる挙手制だと聞いていた。
このときに1年生でも意見を言いやすいように、普段から学年の隔たりのない雰囲気づくりをしているのだと、舞は言っていた。
皇ヶ丘学園バスケ部は、完璧な年功序列制だった。
後輩が先輩に意見を言うということは、許されていなかった。
だから、こういう温かい関係に触れるたびに、なんとなく私の心の中まで温まるような気がするのだ。
私もマネージャーとして、気づいたことを意見してみた。
スクリーンアウトの徹底と、フリースローの際にラインを越えてしまっていること。
誰も、新入りのくせに、なんて瞳で私を見なかった。
汗をぬぐいながら、真剣に私の話に耳を傾けてくれている。
それが、とても、嬉しかった。
私が存在することを認めてもらえているようで、嬉しかった。
もう私の存在価値など“あの”時に枯渇してしまっていたから。
そう、羨望と称賛の眼差しが、憐れみと軽蔑の視線へと変わっていった“あの”時から。