夢みる蝶は遊飛する

ベンチの隣の立派な広葉樹が、紅く色づいた葉を私の膝に落とした。

約束の時間まで、あと5分。



人を待つ時間というのは、どうしてこうも長く感じられるのだろう。


ベビーカーを押す父親と、その傍らで笑う母親。

杖をつきながら歩く老人。

ロータリーのタクシーの列。

駅の隣のコンタクトショップから出てくる若い女性。

何気ない、日常の風景。



「え・・・高橋、さん・・・?」


一瞬、自分の名前が呼ばれていることに気がつかなかった。

誰かが、誰かの名前を呼んでいる、としか認識していなかった。

そして、呼ばれている名前が自分のものだったことに気がついて振り向くと、そこには。



「須賀くん・・・」


どうして、彼がここに?


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