夢みる蝶は遊飛する
ここは彼の家からも最寄り駅なわけだから、いてもおかしくはないのだけれど。
それにしてはタイミングが合いすぎているような気がして、私の頭に疑問符が浮かんだ。
「高橋さん、今日用事ができて行けなくなったんじゃなかった?」
でも彼は私の疑問には答えずに、さらに質問を返してきた。
「どういうこと? 私、用事ができたなんて一言も・・・」
「え、だって、柏木と高橋さんが二人ともダメだからって、俺と隼人で備品買いに行くことになったんだけど」
「舞と私が? ちょっと待って」
そんな連絡はあっただろうか。
鞄から携帯電話を取り出して、受信メールを確認しようとしたところで、いきなり軽快な音とともにメールの受信を知らせるランプが点滅しはじめた。
開いてみると、そのメールの差出人は、舞だった。
今日自分は行けなくなったから、代わりの人間を手配しておいた、ということと謝罪の文章が数行に渡って書かれていた。
「舞は今日来れないみたい。でも、私は用事なんてないんだけど・・・」
どうして私まで、今日来れないということになってしまったのだろう。
なにかの伝達ミスだろうか。
そんなことを考えていたら、私と同じように携帯を操作していた須賀くんが、突如奇声を上げた。
「ぬあーーーーっ!!」
「ど、どうしたの?」
戸惑いながらも訊ねてみる。