夢みる蝶は遊飛する

彼は潰さんばかりに携帯を握りしめていて、その手は力が入りすぎて白くなっていた。


「俺たち、はめられた! あいつらに!」

「はめられた・・・? どういうこと?」


「柏木と隼人が手を組んで、俺と高橋さんが買い物に行くように仕向けたんだよ。柏木はもとから来る気なんかなかったし、隼人だって俺と一緒に買い物するって思わせといて、実際は俺だけに行かせようとしたってわけ」



つまり。

もともと備品の買い出しは、舞と私が行くことになっていた。

しかし、舞から桜井くん経由で須賀くんに、私たちが二人とも買い出しに行けなくなったという嘘の情報が流された。

桜井くんは、ならば自分たち二人で行こう、と須賀くんを誘った。

けれど行ってみたら、待ち合わせ場所には私しかいなかった。


「でも、舞と桜井くんが手を組んでって、どうしてそんなことする必要があるの? 二人とも、そんなに買い出しに行きたくなかったのかな」

「それは俺が・・・・まあ、うん、それはいいんだ、べつに・・・・・」


歯切れが悪い彼の言葉が気になったけれど、追及はしなかった。

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