夢みる蝶は遊飛する

無意識下の意識


私たちが電車で25分かけて着いたのは、先日沙世と買い物に来た街だった。

たぶん、この県内で一番栄えている街。


電車の中で、少し緊張している私に、須賀くんはたくさん話を振ってくれた。

数Ⅱの鈴木先生の、服装センス。

顧問である山田先生の、教師らしからぬ外見。

クラスの中で付き合っている人たちのことまで教えてくれた。


転校初日に、少し馴れ馴れしいと思ってしまったけれど、彼は元来人を気遣うことのできる優しい人なのだと思う。

自分の方が固くなって、それでも会話を途切れさせないように一生懸命な須賀くんの姿に、私の緊張もほぐれて気づいたら自然に笑顔になっていた。

いつも表情を操り、笑顔は作るものだという感覚の私が、自然に。

傍目には、私たちはどのように見えるのだろう。

なぜだかそんなことが気になった。






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