夢みる蝶は遊飛する
映画館はスポーツショップから徒歩5分ほどのところにあった。
ボーリング場も併設されているらしく、かなり大きな建物だ。
映画館に入るのは、小学生の時以来だろうか。
たしか私は同じクラスの友だち数人と、人気のファンタジー映画を観た気がする。
それから何年も映画館に足を踏み入れなかった自分に驚きながらも、そんなに暇な子ども時代を過ごしていたわけではないことを思い出す。
考えてみれば、私が海に行ったのは中等部の修学旅行の沖縄が初めてだったし、山に行ったのは小学生のときの林間学校だけだ。
動物園にも水族館にも、小学校の遠足でしか行ったことがない。
記憶に残っていないだけで、物心がついていない頃に行ったことがあるかもしれないけれど。
「そういえば、アクション映画だけどよかった?」
黙りこんでいた私に、恐る恐る、といった感じで須賀くんが話しかけてくる。
私はすぐさま笑顔に切り替えて頷いた。
「うん。アクション好きだから」