夢みる蝶は遊飛する
それは、かつて自分がされていたのとまったく同じ。
相手を軽蔑し、自分のプライドを守ろうとする。
その行為に傷つけられたという記憶は、まだ新しいけれど。
“用無し” “役立たず”
心に深く突き刺さった刃は、簡単には抜けない。
すべての授業が終わり、職員室に寄った後、徒歩で帰宅した。
二十分ほどで祖父母の家に着く。
ここが自分の家だという感覚は、まだない。
自室に入り、新しい教科書が詰め込まれた鞄を机の脇に置く。
制服姿のままベッドに腰かけ、壁にもたれた。
無意識に深いため息をついている自分に気づき、こっそりと苦笑を漏らした。
生活環境が大きく変わるのは、これが初めてではない。
けれどあの頃の自分は、もっと素直で無邪気だった。
周りだって幼い子どもだから、すぐに打ち解けられたのに。
今の私には、もうそんな純粋だった頃の面影はない。
あまりにも知りすぎてしまったのだろうか。
世間というものの、汚さと、冷たさを。