夢みる蝶は遊飛する
そういえば、異性とこんなに親しく話したことなんてなかったのに、どうして今はこんなに平気なのだろう。
たしかに心臓はいつもより速く鼓動しているけれど、不快感はない。
むしろ、それは心地よい緊張感からくるもので―――・・・・
独特なブザー音とともに場内が暗くなり、私は目の前のスクリーンに注目することにした。
芽生えはじめた感情には、気づかないふりをして。
「あー! 面白かった!」
エンドロールが終わり、明るくなったところで須賀くんが大きく伸びをした。
私も、見入っていて身体中に力が入っていたらしく、立ち上がった瞬間に腰から小気味いい音がした。
「うん。面白かったね。ありがとう」
無料で見ることができたのは彼のおかげだ。
この映画は私の好きではないCGを駆使したものではなく、純粋な肉体アクションだった。
主人公を演じるハリウッドスターの屈強な肉体を見て、どんなトレーニングをしているのか訊きたいくらいだ。
「ほんと? よかった」
彼は安心したように表情をゆるめた。