夢みる蝶は遊飛する
外に出るともうだいぶ薄暗くなっていて、冷たい風が吹いていた。
映画を観るのは予定外だったため、こんな時間になるとは思っていなかった。
柔らかなニットカーディガンの袖を引っ張り、指先まで覆う。
それでも寒さはしのげなかった。
けれど、小さく、静かに燃えはじめた心の中のなにかが、私を内から温めていた。
スポーツショップに寄り、預けていた荷物を受け取ってから私たちは電車に乗り込んだ。
少し込んでいる車内で、須賀くんと私の腕が密着するほど近づくと、彼の背が意外に高いことに気がついた。
そんなところに、今まで感じなかった男らしさを感じて、私は少し恥ずかしいような不思議な気持ちになった。
顔が熱を帯びているのは、ききすぎた暖房のせいにして。
電車の窓から見える、川沿いの柳の木を眺めていた。