夢みる蝶は遊飛する
「あのねえ、備品買いに行っただけ、じゃないでしょ。一緒に映画観たってそれ、完全にデートよ」
「デート・・・・?」
自分でも考えないようにしていたその単語を出されて、少し落ち着かない気持ちになった。
たしかに備品の買い出しは役目だけれど、映画を観たというのはそれからは逸脱した行為だ。
「それに、舞が急に都合が悪くなって、なんかの連絡ミスで亜美と須賀だけになったって、おかしいと思わなかったの?」
沙世が二つに結った髪の毛先を見つめながら言った。
「え・・・まあ、少しは。でも、だからって」
私だって、須賀くんの“はめられた”という言葉を疑問に思わなかったわけではないけれど。
舞と桜井くんが私たちをはめる理由が思いつかない。
ただ単に面倒だから、とか、そんなところだろうと思っていた。
「まあ、あたしには丸わかりだけどね、なんではめられたのか、とか」