夢みる蝶は遊飛する
今まで他人にこんな顔をされたら、私は馬鹿にされていると思って嫌悪感を抱いていたはずだけれど。
今は、こんな関係が心地いい。
それが沙世だからなのか、それとのこの地へ来てから私にもたらされた変化なのかは、わからないけれど。
遠くで、ブザーが鳴る直前に、須賀くんが3ポイントシュートを放ったのが見えた。
ボールはリングにかすりもせず、バックボードに当たって鈍い音を響かせながら床に落ちた。
けれど、彼の顔は、清々しく輝いていた。
私が失ってしまったものを、彼は持っている。
それが眩しくて。
眩しすぎて、私はそっと瞳を閉じた。