夢みる蝶は遊飛する
考えてみても思い出せない。
部活をしていたであろうことしか。
しかもそれもはっきりと覚えているのではなく、私の中の常識的に考えて、部活をしていたとしか考えられないだけだ。
「まあいいけど」
それよりライティングの英作文当たってるから見せて、と沙世は手を差し出した。
「自分でやらなきゃ駄目だよ」
そうは言いつつも、私は頼られることが嬉しくて、ついノートを貸してしまう。
沙世は普段、あまり予習をやってこない。
朝のHRが始まるまでの時間に、私のノートを必死になって写しているのは日常茶飯事だ。
そんな穏やかな毎日が、楽しくて、幸せだった。
嵐の前の静けさ。
まさにそう呼ぶべき日々だった。