夢みる蝶は遊飛する
帰宅して、自室に入ると、当たり前だけれど暗くて冷えきっていた。
真っ暗な部屋の中、手探りで電気を点けた。
オフホワイトのモヘアのラグが、見た目だけは暖かにしてくれている。
制服からラフな格好に着替えて、夕食のためにダイニングに向かう。
サックスブルーのギンガムチェックのテーブルクロスが敷かれたダイニングテーブル。
その上で、湯気の立つクリームシチューが私を待っていた。
部活に所属しているために帰宅が遅くなった私は、祖父母と共に夕食をとることができなくなった。
けれど、ダイニングテーブルから見える位置で祖父はテレビを観ているし、祖母はキッチンに立っている。
家族、とは、こういうものなのだろうか。
温かい食事を作って私の帰りを待ってくれている祖母に、そして寡黙ながらも私を見守ってくれている祖父に感謝して、私はスプーンを握った。