夢みる蝶は遊飛する
その翌日も、携帯電話が鳴る。
同じように、また。
3コールで電話をとった私は、もしもし、という言葉の代わりに、電話のむこうにいるだろうその人を、呼んでみた。
「・・・おとう、さん・・・・・?」
息をひそめて、祈るように相手からの返答を待った。
けれど。
次の瞬間、通話は途切れていた。
不快としか思えないような電子音に苛立ち、ため息を吐いて昂った気持ちを落ち着ける。
そして落胆して、携帯を閉じた。
本当に、父だったのだろうか。
わからないけれど、私はそれが父だと確信していた。
かつて分かれてしまった父と私の生きる道が、再び交わったような気がした。
私はそう信じたかった。
父がそれを望んでいるかは、わからない。
けれど私は父に、捨てられて、置いていかれたのだ。
そう考えると、この無言電話が父によるものでないような気がしてくる。
信じたい。
けれど信じがたい。