夢みる蝶は遊飛する
不意に、階下から私を呼ぶ声が聞こえた。
それは祖母のもので、着替えたら降りておいで、と。
精一杯の明るい声で返事をし、私は制服に手をかけた。
紺の襟に白いラインが入った、一般的なセーラー服。
臙脂に近い赤色のリボン。
前の学校ではスカートは膝丈で着用していたのに、今の私はそれを二回も折って、どこにでもいる女子高生のような風貌になっている。
まるで何事もなかったかのように変わりゆく自分が、とてつもなく卑しい人間に思えた。
汚くて醜くて、今すぐにでもこの背を突き破って漆黒の翼が生えてきそうなほど。
そんな馬鹿馬鹿しい考えを断ち切るように、私は制服を頭から豪快に脱いだ。
どうやったって私は、過去とは決別できないのだ。