夢みる蝶は遊飛する
「中間の範囲だったところは、まだわかったのに・・・。複合遺伝、乗り換え、組み換え、伴性遺伝に致死遺伝・・・・・・・。
わかるかボケぇぇっ!!」
昼休みだというのにシャーペンを握りしめて生物のノートと教科書、資料集を睨みつけている沙世。
ついでに左手に持ったサンドイッチまで握りしめていて、具の玉子が出てしまっているのだけれど、それにも気づいていない。
いつも冷静な沙世の、あまりの豹変ぶりに恐れをなしたクラスメイトたちのひきつった笑みを視界の端にとらえた。
「わからないところがあるなら、教えるから言って?」
沙世が唸って愚痴をこぼしている間に昼食を終えた私は、弁当箱を鞄にしまいながらそう言った。
「沙世、うち来たら教えてあげるって言ってるのにー」
ヒロくんが、大きな惣菜パンをかじりながら言った。
ちなみに二人の自宅は斜向かいらしい。
だからすぐに行き来できるのだとか。