夢みる蝶は遊飛する
「これ! ここまではわかるんだけど、そこからがさっぱり。答え見ても全然わかんない。そもそもなに、この『a<2であるから』って」
模範解答の沙世が指さす先を、視線でたどる。
「これは、先にここで場合分けしてるよね。『0<a<2』の場合って。だからaが2以上なのはありえないっていうこと。こっちでaの範囲がa≦1って出てるから、つまりこの場合は・・・・・」
わかりやすいように、言葉を選んで。
聞く必要のないはずの須賀くんとヒロくんまで真剣に聞き入っている。
恥ずかしさを隠すために、わざと真面目な表情を作った。
「わかった! そういうことね。じゃあ、この問題は?」
沙世が笑顔で、また違う問題を指さした。
途中までは自力で解いたらしい。
「なんか途中でわけわかんないことになっちゃって。どうやってもαとβとγの値が合わないのよ」
上から順に見ていく。
すぐに、間違いに気がついた。
「沙世、ここで2α+3=x´って置き換えてるでしょう? それなのにここから、x´がxになっちゃってるの」
正しくは、と私は沙世が持っていたシャープペンシルで数式を書き始めた。