夢みる蝶は遊飛する
「へえー・・・・って、そんなの関係ない! 亜美、続き! 昼休み終わっちゃう」
一見、沙世はやる気になったようだったけれど、昼休みが終わるころにはぐったりとしていた。
「もう無理だ・・・あたしの冬休みは勉強に奪われるんだ・・・消えたい・・・消えてなくなりたい・・・・・」
机に突っ伏して呻いている。
いつもは綺麗な巻き髪も、今日は萎れているように見える。
「大丈夫。どうしても無理だったら、模範解答をそのまま覚えればいいんだから」
数学の追試は、指定された十数問の中から、何問か選んでそのまま出題されるらしい。
いつか沙世を待ち構えているであろう大学受験のことを考えると薦められないけれど、追試を凌ぐだけなら答えを暗記すればいい。
けれど私の言葉は、余計に沙世を落ち込ませてしまった。
「それができれば最初から苦労してない・・・。公式覚えるだけで精一杯。覚えた公式も、開始の合図とともにどっかに飛んで行くのよ・・・」
沙世はむくりと起き上がって、サンドイッチの残りを食べ始めた。
その緩慢な動作が、沙世の今の心境を表しているようだった。