夢みる蝶は遊飛する

「そういえば、冬休み・・・年明けてからだけど、部活動参観やるって」


須賀くんに言われたそのことを、私は失念していた。


「あ、先生に聞いたかもしれない」


本来なら夏休みに行われるはずだった部活動参観。

しかし台風の影響で中止になり、その後夏休みに時間が取れなかったため、冬休みまで延びてしまったらしい。


「去年はどのくらい観に来てたの?」

「男子は10人ぐらいだったと思うけど」

「そう。10人くらい・・・。ちょっと緊張するな」


思わず小さなため息が零れてしまう。

男子の保護者が10人来るということは、女子の保護者も合わせると、それ以上になる。

普段から同じ日程で活動をしているため、男女とも部活動参観の日も同じなのだ。


「緊張?」


そんなのする必要ないよ、と須賀くんは言う。

けれど。


「やっぱりいい印象を持ってもらいたいし、居ても居なくても同じって思われたくないから」


後者の方が、切実な思いだった。

第三者から見たときに、私はその瞳にどう映るのだろう。

客観的に見ても、私は必要な存在であるのだろうか。


自分の価値がなくなることに、不必要だと思われることに、私は極端に怯えている。

冷たい風に、髪がさらわれた。


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