夢みる蝶は遊飛する


夕食を終えて自室に戻った私は、ベッドに放ってあった携帯電話が光っていることに気がついた。


ピンク色の点滅は、メールの受信を意味している。

そのメールを開いてみると、沙世からのものだった。


そういえば今日、赤外線でメールアドレスの交換をしたのだ。

すっかり忘れていたけれど。


可愛らしい絵文字と顔文字で構成されたメールに、同じように装飾を施して返信をしておいた。

普通の女子高生というものは、メールの文ひとつにも個性と可愛らしさを求めるらしい。

難解だ、と高校生らしからぬことを思った。



携帯を机に置き、出窓に寄りかかった。


開けっ放しのカーテンを閉める前に、そこから外を覗いてみた。


星々が、群青色の夜空の中で白い輝きを放っている。

深海に、煌めく宝石を沈めたようだ。



その輝きに触れたくて、そっと、手を伸ばしてみた。


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