夢みる蝶は遊飛する
「あの、私・・・・長谷川夏希と申します」
――ハセガワ ナツキ
心臓が、大きく鼓動しはじめた。
息をすることさえ、忘れてしまうほどの衝撃。
『長谷川』とは、以前私が名乗っていた名字だ。
高橋の姓は母の実家のものであり、こちらに来てから使うようになった名前。
まさか、この人が。
「長谷川雅人の・・・」
私の父の。
「妻です」
頭がぐらぐらと揺れているような気がした。
そのせいで。
この女のせいで、母は。
自ら死を選んだのだ。
私を置いて、逝ってしまったのだ。