夢みる蝶は遊飛する
その刹那。
――私はこの綺麗な夜空に触れていいほど、清らかではない。
その思いが頭に浮かんで、伸ばしかけた手を引っ込めた。
この手が、美しいものに触れていいわけがないのだ。
毎日毎日、記憶の中の彼が、私を責める。
彼は私を罵って、罵って、最後に突き放した。
用無しだ、と呟きながら。
覚えているのは、大好だった彼の、広くて大きい背中。
いつだって私は父のように強くありたかったのに。
毎日毎日、記憶の中の彼女が、私を責める。
彼女は私を罵って、罵って、最後に突き放した。
最後に言葉を交わしたのはいつだっただろう。
覚えているのは、大好きだった彼女の、儚く美しい笑顔。
私の憧れで、目標だったはずなのに。