夢みる蝶は遊飛する
「私・・・お父さんに、会いたいです・・・・」
わかっている。
私が父に会うということは、病に倒れた父の最期を看取るのだということは。
母の死を、未だ鮮明な記憶として心に残している私には、それがどんなことかということも、理解できている。
それでも、私は。
たったひとりの、かけがえのない父に会いたくて。
その手を握りしめて、父が胸に抱えた後悔が少しでも軽くなるようにと祈りたくて。
最期まで父を愛した母が、父を安らかな永遠の眠りへと導いてくれることを、その瞬間まで願いたくて。
父のもとへ向かうことを決意した。
「ありがとう、きっと喜ぶわ」
ほっとしたような声に、自分の決断が間違いでなかったことを悟った。