夢みる蝶は遊飛する
ふたつの永遠
約四ヵ月ぶりの東京。
鈍色の空を突き刺す灰色のビル郡と、淀んだ大気だけが私を出迎えた。
変化に敏感なようで鈍感なこの街は、私という人間の個性を消し去り、あっという間に喧騒へと飲み込んでゆく。
たしかに私はここにいるのに、誰も私を見ない、そこにいるものとして扱わない。
灰色の街に溶け込んだ無個性な人間など、誰もいちいち気に留めない。
学校には、しばらく休むと祖母に連絡しておいてもらった。
しばらくと言ってもせいぜい一週間だ。
ちょうど一週間後は、二学期の終業式だから。
祈りにも似た覚悟を胸に秘め、私は病院へと向かった。
17年近く住んでいた東京。
けれど、懐かしさは感じられなかった。
今のように軋んだ心の状態でなければ、もう少し懐古の情もあったかもしれない。
電車を乗り継いで行き着いた病院の最寄り駅からバスに乗る。
スクランブル交差点を、まるで早送りのように忙しく歩いてゆく人々が、なんだか滑稽だった。
のんびりとした田舎に慣れてしまった証拠だ。
バスに揺られながら、昨晩から今朝にかけて起こったことを思い返す。