夢みる蝶は遊飛する
「ベッドに・・・。もう、意識はないわ」
今は安定しているけれど、いつ急変するかはわからない、と彼女は言った。
その言葉を受け流し、私はベッドへと近づいていった。
聞きたくなかった。
そんなやみくもに不安を煽る言葉は。
父との再会。
それはたしかに望んでいたことだけれど。
どうしてこんな状況になるまで、父は私と会おうとしてくれなかったのだろう。
どうして私は過去を悔むだけで、壊れたものをそのままにしておいたのだろう。
どうして私たちは現実を受け止め、互いに向き合うことをしなかったのだろう。
どうして。
どうして。
そして、父の姿を見た瞬間、私は崩れ落ちた。
たしかにそれは父であるのに、信じたくなかった。
目の前に横たわっているのは、父のふりをした別人だと思いたかった。