夢みる蝶は遊飛する
不意に、私の肩に触れた手。
それは座り込む私を支えようとした、夏希さんのものだった。
けれど私は
「触らないで!」
そんな言葉とともに、それを振り払った。
傷ついたように揺れたその瞳を見て、砕け散った冷静さをかき集めて、なんとか心を落ち着けた。
「・・・・すみません」
そして小さく謝った。
本当は私だって、彼女を傷つけたいわけではないのだ。
けれど、怒りと悲しみの矛先を自分に向けても、まだ余った感情の行き場が見つからない。
だからこんな態度をとってしまうのだ。
「あの、父と二人にしてもらえませんか・・・?」
俯いて、その瞳を見ないようにして、私は弱々しい声を絞り出した。
先ほどまでの高圧的な態度は、もうとれそうになかった。
彼女は頷き、そして音もなく出ていった。