夢みる蝶は遊飛する
――ねえ、私には・・・
「私には、わからないことがたくさんあるの」
自分のことなのに、知らないことだらけで。
常に不安がつきまとう。
自分はここにいてもいい人間なのだろうかと。
本当は望まれていない人間なのではないかと。
「お父さんは、すべて知ってるの?」
ベッドの脇に膝をつき、父の左手を自分の両手で包み込んだ。
「どうしてまだ、結婚指輪を填めてるの?」
父が誓ったふたつの永遠の証を、そっと撫でた。
「私を見限ったから出ていったんだよね。それなのにどうして、私に最期を看取ってほしいなんて思ったの?」
父が家を出ていってからの、不可解な行動。
それらは未だ点の状態で、線にはなっていない。
いつか、ひとつひとつが結びつく日がくるのだろうか。
「それから・・・・」
私が私について抱えている、もっとも大きな謎。
その事実は、私の心に深く根ざした孤独感と強く結びついている。