夢みる蝶は遊飛する


とても窮屈な毎日を過ごしていて、決められた道を歩んでいく他にすべきことも、許されていることもなかった。

けれどただひとつ、自分が輝けるすべを見つけられた。

しかしそれをすることは、まわりには認められなかった。

用意された人生には、そんなことは予定されていなかった。

否定されつづけてもひたむきに走りつづけた彼の夢を壊す権利が、いったい誰にあったのだろう。


そんな父の人生。



心細かった。

不安だった。

それを分かち合える人間が、まわりにいなかった。

寂しくて、辛くて、それでも立ち止まるわけにはいかなくて。

それでも限界が訪れてしまったから。

大切な宝物を、手放さざるをえなくなった。

半身をちぎられるような苦しみと悲しみの末に掴んだ幸せを、もう壊したくないだけだった。

けれど壊れたのはまたしても、彼女が先だった。


そんな母の苦悩。



誰もが幸せになる道はたしかにあったのに、うまくかみ合わない歯車は、軋んだ音をたてるだけだった。

誰も悲しむ必要はなかった。

傷つく必要などなかった。

互いにただ、愛されたかっただけだった。



そんな哀しい真実を、私はまだ知らない。




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