夢みる蝶は遊飛する
耳を塞いで、目を強く瞑った。
頭を振っても消えないその残像と残響が、だんだんと私に近づいてくる。
それは、発狂しそうなほどの恐怖だった。
封じこめたはずの悲哀と、絶望がひきずり出されてくる。
母は、もうこの世にはいないのだ。
父ももうすぐいなくなってしまう。
どうして私ではないのだろう。
私なら、この命を捨てるのを厭わないのに。
こんな世界で孤独を感じて生きていくくらいなら、私が死ねばよかったのに。
両親がつくりだした私という命は、両親がいなければ存在する理由も価値も失ってしまうというのに。
もう、これ以上なにも失いたくはなかった。
もう独りにはなりたくなかった。
ただ愛されたかっただけだったのに。
それすらももう、望めない。
運命と呼ぶには残酷すぎる瞬間は、すぐそこまで迫っていた。