夢みる蝶は遊飛する
母の最期の姿、父の最期の顔。
それらが私の脳裏に焼きついたまま、決して消えることのない光景として残っている。
母が最期に私にくれた涙、最期に私の手を握った父の手。
どちらもあたたかかったと思ったのは、気のせいだろうか。
そのとき、車酔いでもしたかのような感覚に、頭がぐらりと揺れた気がした。
ベッドから起き上がると、血液が一気に下降して一瞬だけ目の前が真っ暗になった。
胃が浮遊しているような気分の悪さに、急いでバスルームへと駆けこむ。
冷えた洗面台に手をつき、こみ上げるものを吐いた。
空っぽの胃から逆流する強い酸性のそれが、口内の粘膜を傷つける。
ひりつく喉の痛みだけが、私に現実を感じさせた。