夢みる蝶は遊飛する
父の友人やかつて皇ヶ丘バスケ部でチームメイトだった方々の中には、顔を知っている人も何人もいる。
この度は本当に残念なことで、気を落とさないように、と何度も言われるたびにうんざりした顔を隠すのに必死だった。
生前父が大変お世話になりました、父の分まで一生懸命生きます、と同じ台詞を繰り返し口にする自分は、まるで機械のようだと他人事のように思った。
目を細めて、口元を歪めて、この顔が痛々しい微笑みを浮かべているように映ればいい。
惨めに見えれば、なおいい。
今なら思いきり、世の中のすべての同情を集めたいとさえ思った。
そして、誰よりも哀れな人間になりたい。
そうして見上げた世界はきっと、すこしはやさしく見えるだろうから。
そして、式が始まる。
五つ紋、染め抜きの和装を身に纏った父方の祖母。
相変わらず私とは目も合わせようとしない。
長い葬儀の間、私はひたすら意識を遠くへ飛ばしていた。
過去という名の、絶対に戻ることはできないところへ。