夢みる蝶は遊飛する
気づけばすべてが終わっていた。
喪主の挨拶で近くに座っていた叔父が一度席を立ったことさえ気がつかなかった。
出棺のとき、たくさんの人が涙を流していたのは、なんとなく私の瞳に映っていた気がする。
きっと誰かが、私のぶんまで泣いてくれているに違いない。
そうでなければ私が泣けない理由など思いつかない。
母が亡くなったときも、父をこうして見送るときになっても流すことのできない私の涙は、誰のためになら流せるのだろうか。
それを自分のために流すことができたなら、きっとそれは私が自分のことを許すことができたときだろう。
深紅の残像と消えない罪を背負って、私は歩きだした。