夢みる蝶は遊飛する
違う、そんなことは今考えたくはない。
今は父のことだけを考えていたいのに。
私にとってはどうでもいいような情報で、頭の中を占められたくはない。
今はただ、父の幸せを願いたいだけなのに。
次々とめまぐるしく突きつけられる現実に、私の心はなすすべもなく頼りなく彷徨っていた。
どうして誰も放っておいてくれないのだろう。
悲しみに浸る間もないまま、私の神経は擦り減らされていった。
そのとき、係員がノックをしてから部屋に入ってきた。
それは、父の肉体と魂が切り離された合図だった。
これから焼かれた父と対面するというのに、その覚悟ができていない私は、最後まで部屋を出ることができなかった。
そして、いつまでもソファから立ち上がろうとしない私を促すように、肩に手を置いた叔父を、じっと見つめた。
「もう少し詳しく説明していただけますか」
すべてを知る覚悟は、もうできている。
それがどんなに悲しく切ないものだったとしても。
けれど翌日私が叔父に聞かされたのは、予想もしなかった父の過去だった。