夢みる蝶は遊飛する
HRの開始を告げるチャイムによって、小早川くんは残念そうにしながらも自分の席へ戻っていった。
それとともに、ぎりぎりで駆け込んできたらしい須賀くんも、汗だくのまま私の隣に座った。
それを見て沙世が呆れた声を出す。
「あんた、また寝坊したわけ?」
「うっせーよ、携帯のアラームがオフになったままだったんだよ」
きまり悪そうに言いながら、須賀くんはスポーツバッグから取り出した青いタオルで顔を乱暴に拭っていた。
少し長めの鳶色の髪の毛先はさらに色素が薄くて、透き通っているようにさえ見える。
そこを伝って汗のしずくがひとつ、白いシャツに吸い込まれていった。
それをじっと見ていた私に気づいたのか、彼がこちらを向いた。
髪と同じ淡い色の瞳が、私の姿をとらえる。
自分が無意識に彼のことを見つめていたことに気づいて恥ずかしくなった私は、ごまかすように少し慌てて挨拶をした。
そこで担任の佐竹先生が教室に入ってきたため、HRが始まった。