夢みる蝶は遊飛する
「すべて、です。すべて知りません。自分がどうして両親と引き離されていたのか。母と父の、そうしなければならなかった理由も、わかりません。
どうして私は、施設にいたのか・・・・」
私が幼い頃、児童養護施設で暮らしていたことは、私たち家族しか知らない秘密だった。
虐待されていたわけでもない、片親家庭だったわけでもない。
それなのにどうして、私は両親と一緒に暮らせなかったのか。
私はその理由を、未だに知らない。
「ただ・・・」
私はあの時、事実を知ろうとしなかった。
傷つくことを恐れていた。
いくら感情を切り離して、笑顔の仮面をつけていたとしても、私は子どもだから。
暗闇の中でうずくまっている、小さな子どものままだから。
遠い過去に置き去りにした心は、成長を止めてしまっているから。