夢みる蝶は遊飛する

この地に眠る母の墓前に供える花を買うために、駅前の花屋に寄った。

さびれた外観とは裏腹に、色とりどりの花々に彩られた店内は、私のささくれ立った心をほんの少し癒してくれた。

鼻腔をくすぐる花の香りを胸いっぱいに吸い込みながら、ひとつひとつ眺めていった。

母に似合う、美しい花を選びたかった。

そんな私の瞳に映ったのは、珍しい色をした、母の好きな花だった。


「紫のカーネーション・・・」


私の呟きを聞いた店員が柔らかく微笑みながら説明してくれた。


「その花、ムーンダストっていうんです。世界で初めての青系のカーネーション。素敵な色でしょう?」


アメジストのような輝きを放つ、深い紫色の花弁が美しかった。

『ムーンダスト』という名に相応しく、澄んだ夜空を思い起こさせる色の花。


「ムーンダストの花言葉は、『永遠の幸福』なんですよ」


結局、ムーンダストとかすみ草でささやかな花束を作ってもらった。

これから両親の墓参りのときには、この花を供えようと決めた。

父と母に、『永遠の幸福』を手に入れてもらうために。



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