夢みる蝶は遊飛する
古い街並みを通り抜けて、小高い丘に霊園はあった。
祖父母と一度きりしか訪れたことがないけれど、それでも私は吸い寄せられるように母の墓の前まで辿り着いた。
祖母がこまめにここを訪れていることは知っている。
だから私が手入れをする必要などないほど綺麗に保たれている。
私は納骨の際に訪れて以来、一度も足を運んでいない。
母が、私がここに来ることを望んでいないかもしれないと思ったら、どうしても来ることができなかったのだ。
花束を置いて石畳に膝をつく。
先ほど聞いた話が脳裏から離れず、混乱しすぎて、血液が逆流しているかのようなひどい不快感がこみあげてくる。
ずっとざわついている胸の内では、複雑、という言葉では表せないようなさまざまな想いが、鈍痛となって私を苦しめている。
吹きつける潮を含んだ北風が頬を刺しても、膝に小さな石の欠片が食い込んでいても、痛みは感じない。
心だけが、軋むようにひどく痛んだ。
凍えるほど冷たく、焼けつくほど熱く。
この痛みが永遠に続けばいいのに。
この心が痛みを感じている限り、私は私でいられるのだから。