夢みる蝶は遊飛する
「夏希さんには、本当に感謝しています。独りで闘病していたらきっと、お父さんはもっと寂しくて辛かったと思うから・・・。
それに両親の間に溝を作ったのは・・・・私です」
けれど、どんな事実を知らされても私の心は凍てついたままで。
責められるべきは私なのだという考えは拭い去れなかった。
「それは違うわ」
涙に濡れてはいたけれど、凛としたその声に顔を上げた。
「雅人さんの一番はいつも、あなたと、あなたのお母さんだった。そのあなたが、ご両親の間に亀裂を入れるわけがないわ」
「お父さんの、一番・・・・?」
どうしてそんなことが言い切れるのだろう。
父に一番想われていて、一番愛されていたのが母と私だったなんて。
「指輪、見たでしょう?」
それが父の指に輝いていた、永遠を誓うふたつの輝きだということはすぐにわかった。
「彼は、どうしても外せなかったのよ。だから二つしていたの」
あなたたちを、愛していたから――・・・・