夢みる蝶は遊飛する
外さなかった指輪は、永遠の愛の証。
その言葉に、父の隠していたすべてがひとつに繋がった。
そしてやっと信じることができた。
父は最期まで、たしかに母を、私を愛してくれていたのだ。
夏希さんと二度目の永遠を誓ったことなど、関係なかった。
ただ、愛されていたということだけを、きっと私は覚えておけばいいのだ。
彼女はもうそれ以上、なにも言わなかった。
私も、口を開けば大切な想いが零れて消えてしまう気がして、なにも言えなかった。
父の隠していた真実は、あまりにも身勝手で、自己犠牲の塊だった。
けれど、どうしてそれを責めることができるだろう。
身勝手にさえ思えた行動は、父が私たちのことを考えたゆえのこと。
自分を犠牲にしたのは、それが父の愛し方だったから。
愛に飢えているのは、自分だけだと思っていた。
けれど私はこんなにも愛されていた。