夢みる蝶は遊飛する
新たな愛を手に入れた父は、満たされているのだと思っていた。
けれど父は、愛した分だけ愛を受け取ってはいなかったのかもしれない。
そんな父の、哀しい最期。
あの時初めて見た父の涙は、夏希さんの瞳から零れたものではなくて、本当に父のものだったのかもしれない。
もう一度、問いかけたい。
お父さん。
あなたは幸せでしたか、と。
あなたは今、幸せですか、と。
父がどう答えるのかは、私にはわからない。
けれど、最期の瞬間に握り返されたあの手の温もりが、その答えであるような気がした。