夢みる蝶は遊飛する
舞っていた雪は、もう止んでしまった。
石畳を少し湿らせただけの斑雪(はだれゆき)は、土と混じり合って泥となり、先ほどまでの美しさは見る影もない。
きっと、美しいものが美しいままでいられる時間は、限りなく短いのだ。
美しさと儚さは、背中合わせ。
美しすぎる愛情は、儚く散ってしまうのだから。
冷えきって感覚のなくなった手を握りしめて立ち上がる。
ふらついても、誰も支えてはくれないのだ。
永遠の苦しみの中、独りで生きていくと決めたのだから。
今にも泣きだしそうな灰色の雲と湿った大気は、私を冷たく包み込み、この背に重くのしかかった。