夢みる蝶は遊飛する
来たのと同じ道を、再び歩いて戻る。
行きに抱えていた花束は墓前に手向けてきて、もう私の手元にはないのに、なぜだか花の香りだけはいつまでも漂っていた。
いつまでも、いつまでも、私の頭からは、潮風が枯れ木の枝の間をくぐり抜ける物寂しい音が離れなかった。
もしかしたら天上でひとり立ちすくんでいた母が、寂しさゆえに父を呼んでしまったのかもしれない。
私はその想像を、頭を振って掻き消した。
それから電車に乗り、乗り換えをして自宅の最寄り駅に着いた。
いつもなら気にも留めない喧騒が、やたらと耳についた。
けれどそれに安心感を覚える自分もいて、やはり私は孤独に慣れているけれど、それが嫌いなのだと感じた。
キャリーバッグを引く手を何度も換えながら、家までの道のりをゆっくりと歩く。
この町では降雪はなかったらしく、路面は乾いている。