夢みる蝶は遊飛する

一歩一歩家に近づくにつれて、祖父とのあのやりとりを思い出して、無意識に歩みが遅くなる。

せっかく築いた祖父母との関係は、壊れてしまっただろうか。

今朝、帰宅の連絡を入れたときに聞いた祖母の声は、なにも変わりはなかったけれど。


私は本当に必要な人間なのだろうか。

こんな私が存在する価値など、あるのだろうか。



もし。

もし祖父母に拒絶されてしまったら、東京に戻り、長谷川家という檻の中で後継者としての自分の存在価値を手に入れるのも、悪くはないのかもしれない。

どんな理由であれ、私という人間が必要なのであれば、私はどこへだって行ける。


傷ついて羽ばたけない翅なら、引き裂いて捨ててしまおう。

大空を舞う夢など、とっくに諦めてしまったのだから。


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