夢みる蝶は遊飛する
家の門を開ける前、振り返って空を見上げた。
陽は沈み、空は暗い。
星はひとつも輝いてはいなかった。
私の両親は星になったわけではない。
きっと天上で、生きている。
そう思わなければ、この暗闇に耐えられそうもなかった。
冷えきった身体で帰宅した私を出迎えてくれたのは、祖母だけだった。
明るく振る舞いすぎて痛々しく見えたり、暗く沈みすぎて必要以上に心配をかけたりしないような微妙なさじ加減は、知り尽くしている。
完璧な模範解答の表情を貼りつけた顔は、少し気をゆるめると崩れてしまいそうだった。
今まで偽り続けて生きてきたのだから、これからだってできるはずなのに。
どうしてだろう。
今はそれが、こんなにも辛いのは。