夢みる蝶は遊飛する


私がそんなことを考えているうちにも、授業は進んでいる。


気を取り直して黒板に向かうものの、無意識にため息が零れた。




理由は、この話の内容である。


男と女の駆け落ち。

昔ならよくあることなのかもしれない。


けれど。

私の両親も、駆け落ち同然で結婚したのだ。

ふたりがそれで本当に幸せだったのかは、私にはわからない。

もう訊くすべも持ち合わせていない。




そして。

大切な人が命を落とした後の、残された者の気持ち。

それなら私にもわかる。

共に消えてしまいたかったと願う気持ちも。



思い残すことを抱えてこの世を去る人間と、愛する者が旅立ってからもこの世に残される人間、どちらが辛いのだろう。


私はその疑問に、きっと一生かかっても答えられない。

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