夢みる蝶は遊飛する

たまに、パーティーが開かれたりもした。

18歳を迎えて卒園していく子ども、別の施設に移動する子ども、親に引き取られる子ども。

そんな子どもたちのゆく道が、幸せに満ちているように。

そう願うためのものだった。

けれど幼かった私にはまだ理解できなくて。

職員に訊ねた。

「どうしてあの子はいなくなるの?」と。

私ともっとも仲のよかった女の子が、前に出て花をもらっていた。

ずっと友達だよ、とその子は大切にしていた動物を模った消しゴムを私にくれた。

どうしてそんなことをするのかわからなくて。

訊ねた私に職員が言った。

「あの子はこれから、おとうさんたちと一緒に住むの」と。

顔は覚えていないけれど、声だけは耳に残っている。


「おとうさんたちと一緒に住むのは、楽しいの?」


たしかその後、私はそう言ったはずだ。

それに職員は答えず、ただ微笑んでいた。

私を膝にのせてくれるその体温はあたたかいけれど、どこか“おかあさん”とは違う、と幼心に感じた。

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