夢みる蝶は遊飛する

いつからそこにいたのか、私にはわからない。

どうしてそこにいたのかも。


わかっているのは、私は両親に虐待されていたわけではないということ。

そして、捨てられた子ども、いわゆる棄児ではないということだけだった。

面会に来てくれていた両親の様子を思い返してみても、やはり私を捨てたのだとは考えがたかった。

けれど、捨てられたわけではなくとも、きっと似たような理由なのだろう。

でなければいつまでも隠しているわけがない。

一緒に暮らしていなかったということは、必要とされていなかったということと同じだ。

私はきっと生まれたときから、存在する価値のない人間だったのだと、思わざるを得なかった。



私のいた児童養護施設はたぶん、そこまで環境の悪い場所ではなかった。

施設内でのいじめも、虐待や不適切な待遇もなかった。

それでも、施設での暮らしで、楽しかったことを思い出すことはできない。


幼少の頃から、私の幸せのそばにはいつも、両親がいたのだから。

けれど、両親の幸せの傍らに、いつも私の存在があったのかどうかは、私には知るすべがない。


< 321 / 681 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop