夢みる蝶は遊飛する
予感
半月も経てば、新しい学校生活にも必然的に慣れてくる。
沙世と過ごす毎日は楽しいし、須賀くんは相変わらず寝坊や居眠りを繰り返しているし、小早川くんは私に無駄に愛想を振りまいてくる。
今まで過ごしたことのない平穏な日々。
それは私に与えられた至福の時だった。
今は体育の時間。
天気は快晴。
男子は外でソフトボール、女子は体育館でバレーボールである。
私は、運動は全体的に得意である。
けれどバレーボールはあまり好きではない、というより苦手だ。
理由は単純、ボールが当たると痛いから。
そう言うと、バレー部エースの沙世に呆れたような視線を向けられた。
中学からバレーをやっている沙世にとっては、もう腕の痛みなど感じないのだろう。
真っ赤に腫れ上がった後に、気味の悪い紫色へとまだらにうっ血した自分の腕を見て、私はため息を吐いた。
「亜美! 次うちらのチームが試合だからね。痛がってないで勝つよっ!」
くじで同じチームになった沙世は、全身から湯気が出そうなほどに闘志を燃やしている。
長いポニーテールが逆立っているように見えるのは気のせいだろうか。
いつも気だるげな雰囲気を纏っている沙世の、そのギャップに驚いた。