夢みる蝶は遊飛する
その後は、一度も会ったことのなかった母方の祖父母に連絡をとり、私ではできない事後処理を行ってもらった。
父の携帯電話に、母の死について連絡を入れたものの、父は現れなかった。
それが父の、母に対する気持ちの表れのようで悲しかった。
母は最期まで、父を愛し続けていたというのに。
結局それには、父なりの事情があったことはわかっているけれど。
荼毘(だび)に付された母の骨を骨壷に納めるとき、その存在のあまりの儚さに涙が溢れそうになった。
どうしようもないほどの絶望と喪失感は、私の精神を麻痺させた。
あの頃はどうやって毎日を過ごしていたのか、まったく覚えていない。